在宅でのお仕事をお探しでいらっしゃる皆さま、この度はわたくしの拙い文章にお目を通してくださり、誠にありがとうございます。東京都目黒区に居を構えております芦田玲と申します。元々はIR広報として企業に勤めておりましたが、出産を機に、在宅でのキャリアへと大きく舵を切ってはや数年が経ちました。今日は、わたくしのささやかな経験から、皆さまへお伝えしたいことがございまして、筆を執らせていただきました。
最近、わたくしの周りの友人や知人、そしてSNSなどでも「パラレルキャリア」という言葉を本当に多く拝聴するようになりました。特に、子育て中の女性にとって、限られた時間の中でご自身のスキルを活かし、あるいは新しい分野に挑戦することは、自己実現や、なにより経済的な自立につながる、大変魅力的な選択肢の一つであるとわたくしも常々感じております。まるで、フランスでの「兼業」が、人々の生活に溶け込むようにごく自然なものであるように、日本でも多様な働き方が、より一層求められている時代なのでしょうね。
ええ、何を隠そう、わたくしも、まさにその一人でございます。会社員時代は多忙を極め、「いつか、こんな風に、自宅の書斎から世界と繋がれるような働き方が叶えられたら」と密かに夢見ておりました。そして出産を経て、本格的に在宅でのお仕事へと踏み出したのでございます。フランス語検定2級の資格も持っておりますので、当初は翻訳のお仕事や、データ入力、そして企業様のメール対応など、いくつかの業務を掛け持ちしておりました。このパラレルキャリアという働き方そのものは、非常に意義深く、いくつもの視点や新しいスキルを同時に磨けるという、得難い喜びをわたしに与えてくれます。
ただ、正直にお話しいたしますと、このパラレルキャリアの道を歩み始めた当初、わたくしは少々大きな壁にぶつかり、苦い失敗を経験いたしました。それは、他でもない「時間管理」という名の、高い壁でございました。まさか、かつては大手企業で多岐にわたるスケジュール調整や大規模プロジェクトの管理まで手がけていたわたしが、個人の裁量で、ここまで手こずるとは、当時のわたしには想像だにできないことでした。
かれこれ2年前のことになります。当時、娘が幼稚園に入園したばかりで、午前中の数時間は自分の時間ができると期待に胸を膨らませていました。そこで、週にそれぞれ約10時間程度の業務を二つ、やや意気揚々と引き受けてしまったのでございます。一つは、時給1,200円のデータ入力業務。そしてもう一つは、わたくしの得意なフランス語を活かせる、時給1,500円の翻訳アシスタント業務でございました。朝、娘を幼稚園に送り届けてから、午前の時間を有効活用し、午後からは家事や育児に専念できるという、完璧で、洗練された計画だと、あの頃のわたしは信じて疑いませんでした。
しかしながら、現実は、常に私たちの計画の及ばぬところにありますね。残念ながら、わたしの計画もその例外ではありませんでした。まず、幼稚園に入園したばかりの娘が、新しい環境に慣れるまでに予想以上に時間を要したのです。毎朝の準備に手間取ることはもちろん、時には登園を嫌がり、家を出るまでに格闘することも一度や二度ではございませんでした。また、週の半ばに急な発熱で幼稚園からお迎え要請が入ったり、長期休暇中は幼稚園が休園となるため、日中の預け先を探す手間に奔走したりと、本当に予期せぬ出来事が矢継ぎ早に発生いたしました。
結果として、あてにしていたはずの作業時間は、見る見るうちに大幅に削られてしまったのでございます。締め切りが迫る焦燥感から、夜中までパソコンの前にかじりつく日が増え、時には健康を顧みずに睡眠時間を削って凌ぐことも度々ございました。ある折には、データ入力の作業で、重要な箇所を複数回見落としてしまい、クライアント様からご丁寧に、しかしはっきりとご指摘を受けるという、今思い出しても頬が熱くなるような恥ずかしい経験もいたしました。もう一方の翻訳アシスタント業務におきましても、長時間の無理がたたって集中力が著しく低下し、普段のわたしからは考えられないような単純な誤訳をしてしまい、先方にご迷惑をおかけしたこともございます。その際のクライアント様は、普段から大変懇切丁寧にフィードバックをくださる方でしたが、それだけに、わたしのプロ意識の欠如を痛感せずにはいられませんでした。信頼を失いかねない、まさに冷や汗が止まらない経験でございました。
最終的には、あまりの多忙で心身ともに疲弊し、やむなく翻訳アシスタントのお仕事を、契約期間の途中ではございましたが、辞退させていただく運びとなりました。事前にクライアント様へは正直に状況をお話しし、真摯に謝罪いたしました。幸い、大変寛大なご理解をいただくことができましたが、わたしの心には少なからず、パラレルキャリアへの苦い挫折感が残ったことを記憶しております。
こうした苦い経験から、わたしはパラレルキャリアを継続する上で、いくつかの大切な「教訓」を得ました。
第一に、ご自身の「使える時間」を、決して過大評価しないことでございます。特に、子育て中の女性にとって、お子様の体調や、学校・幼稚園の都合は、まるで移ろいやすいパリの天候のように、予測がつきませんから。ご自身の作業時間を計画される際は、必ず余裕を持ったバッファ、つまり余白を設けるべきだと痛感いたしました。まるで、パリジェンヌがアポイントメントに少しばかり遅れてくるのを許容する、あのゆったりとした文化のように、自分自身のスケジュールにも、心持ちゆとりを持たせることが、結果として心の安定につながるのではないでしょうか。
次に大切なのは、ご自身の「キャパシティ」をきちんと見極めることです。当時のわたしは、収入が増えるという魅力的な誘惑に負け、残念ながら自身の処理能力をはるかに超えた仕事を引き受けてしまったのです。報酬の多寡だけでなく、業務内容の難易度、そしてどれくらいの集中力と時間が必要となるのかを、もっと冷静に判断する客観的な視点が必要だったと、今では反省しきりです。
そして、「優先順位の明確化」もまた、不可欠な要素だと強く感じました。複数の仕事をお持ちになるということは、同時に複数の締め切りや要件に直面するということでございます。ですから、どの仕事が最も重要で、どのタスクを優先すべきか、常に頭の中で整理しておく必要がございます。いわば、緊急度の高いもの、重要度の高いものから着手するという、基本的な考え方が、このパラレルキャリアという働き方においては、殊の外、その真価を発揮するのではないでしょうか。
最後に、そして何よりも大切なのが、「密なコミュニケーション」でございます。もし、あの時のわたしが、もう少し早い段階で、作業の遅れや困難をクライアント様にお伝えできていたならば、きっともう少し建設的な形で調整ができたのではないかと、今振り返れば悔やまれることしきりです。トラブルが実際に顕在化する前に、早めに状況を報告し、正直に相談する勇気を持つことこそが、クライアント様との良好な信頼関係を維持するためには、何よりも大切なことだと、肝に銘じました。
これらの貴重な経験を踏まえ、わたくしは現在、PCオペレーターやメールオペレーター、そして得意なフランス語を活かしたデータ入力補助など、いくつかの在宅業務をバランス良く掛け持ちさせていただいております。以前のように無理なスケジュールを組むことは決していたしません。週ごとに変動する家族の予定、特に幼稚園のイベントなどを慎重に考慮しながら、無理のない範囲で業務を引き受け、調整するよう心がけています。
特に、比較的ルーティンワークとして進められるデータ入力やメール対応と、より集中力を要する翻訳アシスタント業務の配分には、細心の注意を払うようになりました。もし急な用事が入ったとしても、ルーティンワークであれば比較的調整が利きやすいですし、翻訳業務も、例えば短期的なプロジェクトに限定するなど、自分なりの工夫を凝らしております。
ヨーロッパ、とりわけわたくしがこよなく愛するフランスでは、「アール・ド・ヴィーヴル」、すなわち「生活の芸術」という言葉があるように、人生そのものを豊かにする視点が何よりも重んじられますよね。仕事もまた、その豊かな人生を彩る大切な一部であるべきだと、わたしは固く信じております。無理に多くの業務を抱え込み、心身ともに疲弊してしまっては、せっかくのパラレルキャリアも、本末転倒となりかねませんものね。🇫🇷🥐
在宅でのお仕事や副業を検討されていらっしゃる皆さまの中には、わたくしと同じように、新たなキャリアを築きたいという意欲に燃えていらっしゃる方も、きっと少なくないでしょう。そんな皆さまには、ぜひともわたくしのこの拙い失敗談を、ほんの少しでも反面教師として活かしていただき、ご自身のライフスタイルに合った、心身ともに無理のないパラレルキャリアを構築していただきたいと、心から願ってやみません。
女性がご自分らしく輝ける働き方は、決して一つではありません。様々な選択肢の中から、ご自身にとって最も心地よいペースとバランスを見つけ出すことこそが、何よりも大切なのではないでしょうか。皆様がご自身の道を、優雅に、そしてしなやかに歩んでいかれることを、陰ながら心より応援しております。
