はじめまして、わたくし九鬼詩織と申します。京都で生まれ育ち、この美しい古都で三十四年の歳月を重ねてまいりました。かつては、老舗のパティスリーにて、朝露に濡れたバラの花びらに見立てたような繊細なケーキを創り、お客様の笑顔を拝見することにこの上ない喜びを感じていたのでございます。しかし、人生の道は、まるで季節の移ろいのように、時に予期せぬ変化をもたらすものですね。本日は、そんなわたくしが、育児と身体の事情と向き合い、在宅ワークという新たな働き方を見つけるまでの道のりを、皆様にそっとお話しさせていただければと存じます。
わたくしがパティシエの道を志したのは、まだ桜が咲き誇る春風のような、初々しい少女の頃でございました。老舗の門を叩いてからは、実に10年もの間、生地を練り、クリームを泡立て、時には夜空に輝く月のような美しいデコレーションを施す日々。繊細な作業の繰り返しは、まさに職人の世界そのものでした。ただ、毎日立ちっぱなしで重い材料を運ぶ肉体労働は、わたくしの身体に静かに、しかし確実に、その重みを積み重ねておりました。
二年前の梅雨入り間もない頃、長年連れ添ったわたくしの身体が、とうとう悲鳴を上げました。診断結果は「椎間板ヘルニア」。医師からは、このままでは症状が悪化する一方だと告げられ、長時間の立ち仕事や重労働は控えるようにと、無情にも言い渡されてしまったのです。それは、まるで、陽だまりのような温かい夢に突然冷たい雨が降り注ぐような衝撃でございました。わたくしの全てだったお菓子作りを、この手から手放さなくてはならないのかと、正直申し上げて、目の前が真っ暗になるほどの途方に暮れました。ちょうどその頃、生後三ヶ月の長女が誕生し、育児も本格化しておりましたので、身体の負担をこれ以上増やすわけにはいかなかったのです。
退職を余儀なくされ、育児に専念しながらも、心の中では常に「この先、わたくしはどうしたら良いのだろう」という漠然とした不安が渦巻いておりました。家事や育児に喜びを感じながらも、社会とのつながりや、自分自身の力で何かを成し遂げたいという、心の奥底で燃える小さな炎が消えることはございません。しかし、ヘルニアの症状は一進一退を繰り返し、外で働くことは体力的に難しい状況でした。そんな折、インターネットで「在宅ワーク」「主婦」「未経験」といった言葉で検索を始めました。pcwork.jp様のようなサイトで、世の中には多くの選択肢があることを知り、わたくしはまるで暗闇に差し込む一条の光を見たような気持ちになったのでございます。
初めて応募したのは、メールオペレーターの在宅求人でございました。お菓子作りとは全く異なる分野で、パソコン操作も簡単な文書作成程度しか経験がなかったものですから、正直申し上げて、不安で胸が締め付けられるような思いでした。けれど、この機会を逃せば、もう二度と社会復帰のきっかけは訪れないかもしれない。そんな強い思いに背中を押され、勇気を出して面接に臨んだことは、今でも鮮明に覚えております。
ありがたいことに、わたくしは採用していただくことができました。ちょうど一昨年の盛夏、真夏の太陽が降り注ぐような熱気の中、在宅での業務がスタートしたのです。初期研修では、チャットツールを使ったお客様からの問い合わせ対応や、予約システムへのデータ入力、各種書類作成など、実務に近い形で手厚く教えていただきました。最初は、専門用語や、お客様の意図を正確に汲み取る難しさに戸惑い、まるで初めてお菓子作りのレシピ本を広げた時のように、一つ一つの工程を確かめながら進める日々でございました。
特に印象的だったのは、先月の火曜日のことでございます。午前の勤務中、お客様からの緊急のご連絡で、予約の変更をすぐに承らねばならない状況がございました。わたくしは冷静に状況を把握し、お客様のご要望を丁寧に伺いながら、システムを操作いたしました。迅速かつ正確に対応できた結果、「九鬼さんのおかげで助かりました」とのお言葉をいただき、胸が熱くなったのでございます。時給は1,350円でございましたが、金額以上に、お客様のお役に立てたという達成感は、何物にも代えがたい宝物ですね。週に4日、午前中を中心に1日5時間程度の勤務ですが、自宅でまだ幼い娘の成長を見守りながら、自分のペースで働けることに、心から感謝の念を抱いております。
在宅ワークを始めてから、わたくしの生活は大きく変わりました。まず、育児との両立が格段にしやすくなったと感じております。娘が風邪を引いた時や、急な予定が入った時でも、柔軟に時間を調整できるのは、主婦にとって本当にありがたいことでございますね。通勤のストレスもございませんし、ヘルニアの症状を気にすることなく、椅子に座って作業ができる安心感は、わたくしにとって何よりの恵みでございます。
一方で、課題もございます。在宅だと、どうしても運動不足になりがちですし、仕事とプライベートの境界線が曖昧になることもございますね。わたくしは意識的に、午前中に仕事、午後は育児や家事、夕方には軽めのストレッチや散歩を取り入れるように心がけております。また、同僚とのコミュニケーションがチャットやオンライン会議に限られるため、細やかなニュアンスを伝える難しさも感じておりますが、美しい言葉を選ぶように心がけたり、絵文字を効果的に使ったりして、意図を明確にするよう工夫を凝らしております。正直申しまして、以前のようにパティシエ仲間と賑やかにおしゃべりする機会が減った寂しさは拭えませんが、オンライン上でも、助け合いながら仕事を進める仲間がいることは、わたくしにとって何よりの心の拠り所となっているのです。
在宅ワークは、決して「楽な仕事」ばかりではございません。自己管理能力や、新しい知識を自ら学ぶ意欲が常に求められる厳しい一面もございます。しかし、わたくしのように身体の事情を抱えていたり、育児に奮闘する主婦にとっては、まるで暗闇に差し込む一筋の光のような、希望に満ちた働き方であると、心から感じているのでございます。
秋風が心地よい今日この頃、わたくしは自宅で、パソコンに向かいながら、お客様からの感謝のお言葉に心を温め、時に隣で遊ぶ娘の屈託のない笑顔に癒やされております。老舗のパティシエとして過ごした日々も、在宅で働く現在のわたくしも、根底にある「誰かのために心を込めて」という思いは、何一つとして変わっておりません。お菓子作りで培った繊細さや、お客様への真摯な心持ちは、メールオペレーターという仕事にも確かに通ずるものがあると、わたくしはそう信じてやみません。
在宅ワークは、わたくしに第二の人生、そして「主婦として、母として、そして一人の女性として輝く」という、新しい夢の蕾を授けてくれました。もし、今、同じように働き方に悩んでいらっしゃる方がいらしたら、どうかご自身の可能性を信じて、一歩踏み出してみてはいかがかと、そっと申し上げたい気持ちでございます。きっと、あなただけの美しい花が、必ずや見つかることでしょう。わたくし九鬼詩織も、これからも日々精進し、この京都の地で、自分らしく、そして、ささやかながらも美しく輝き続けてまいりたいと願っております。🌹🍰
